レタトルチド 副作用|治験段階トリプルアゴニストの安全性【2026】

本記事は一般的な情報提供のみを目的としており、専門医による診療・診断・治療の代わりとはなりません。健康に関する判断は必ず医療従事者にご相談ください。
結論
レタトルチド(治験段階のトリプルアゴニスト)の副作用を解説。第3相TRIUMPH-1の吐き気・下痢データ、感覚異常や心拍数上昇、未承認・臨床試験のみという現状まで、NEJM・Lilly情報に基づき整理。
結論(要点): レタトルチドは治験段階のトリプルアゴニストで、試験で最も多い副作用は吐き気・下痢・便秘・嘔吐などの消化器症状(用量依存・増量期にピーク)です。加えて感覚異常や、安静時心拍数のわずかな上昇という、この薬に特徴的なシグナルが報告されています。未承認で、臨床試験を通じてのみ提供されます。
レタトルチド(LY3437943)は、Eli Lilly が開発中の週1回注射のトリプルアゴニストで、GIP・GLP-1・グルカゴンの3つの受容体に同時に作用する点が特徴です(Eli Lilly 公式解説)。既存の GLP-1単独作動薬(セマグルチド)や GIP/GLP-1 二重作動薬(チルゼパチド)に、さらにグルカゴン作用が加わった設計で、この3つ目のホルモン作用が有効性と一部の副作用の両方に関わります。
重要な前提として、レタトルチドはまだどの国でも承認されていません。合法的に使用されているのは臨床試験の被験者のみで(ClinicalTrials.gov NCT05929066)、Lillyは承認の見通し時期を公表していません。入手できるかどうかと時期は、残りの第3相試験の結果と規制審査次第です。本ページは「レタトルチドとは何か・試験でどんな副作用が観察されたか」を知るための教育記事です。薬剤クラス全体はGLP-1の副作用まとめをご覧ください。
01
概要と作用機序
レタトルチドが3受容体に作用する意味は、副作用を理解するうえで重要です。GLP-1・GIPは主に食欲抑制と胃排出遅延に関わり、これが消化器症状(吐き気・嘔吐など)の背景になります。一方、グルカゴン作用はエネルギー消費の増加などに関わると考えられています。また試験では、感覚異常や心拍数の上昇といった、この薬に比較的特徴的なシグナルも報告されています(後述)。
有効性は臨床試験で強く示されています。第2相(NEJM, Jastreboff ら 2023)では、12mg 群で48週後に平均24.2%の減量が報告され、明確な用量反応(1mg で約8.7% → 12mg で24.2%)が見られました。第3相 TRIUMPH-1(肥満、80週)でも大きな減量が確認されています(Eli Lilly — TRIUMPH-1)。ただし有効性が高いことと、承認済み・入手可能であることは別問題です。
02
試験で報告されたよくある副作用
レタトルチドのよくある副作用は消化器症状が中心で、用量依存性を示し、増量期にピークを迎えます。第3相 TRIUMPH-1(肥満、80週)における12mg vs プラセボの主な有害事象は次のとおりです(Eli Lilly — TRIUMPH-1、AJMC)。
(出典:TRIUMPH-1 第3相。個人差があります。)
これらの多くは軽度〜中等度で、用量依存性を示し、用量を段階的に上げる増量期にピークを迎えました。有害事象による投与中止率も用量とともに上昇し、4mg で4.1%、9mg で6.9%、12mg で11.3%、プラセボで4.9%でした(Eli Lilly — TRIUMPH-1)。第2相でも消化器副作用は同様に用量依存性で、試験では低用量から始めて約4週ごとに増量する漸増法が用いられました(NEJM 2023)。
| 副作用 | レタトルチド 12mg | プラセボ |
|---|---|---|
| 吐き気 | 42.4% | 14.8% |
| 下痢 | 32.0% | 13.5% |
| 便秘 | 26.1% | 10.9% |
| 嘔吐 | 25.3% | 4.8% |

03
レタトルチドに特徴的な2つのシグナル
同じ消化器症状は他の GLP-1系薬と共通ですが、グルカゴン作用を持つレタトルチドには、より特徴的な2つのシグナルが報告されています。
感覚異常(dysesthesia)
TRIUMPH-1 では、皮膚の異常な感覚(感覚異常、dysesthesia)が 12mg 群で12.5%(プラセボ0.9%)に報告されました(AJMC)。ピリピリ・チクチクといった皮膚感覚の変化で、多くは軽度〜中等度で投与中に消失しました。原因はまだ解明されていませんが、レタトルチドで比較的目立つシグナルです。プラセボとの差が大きい点が特徴です。ただしレタトルチドだけのものではなく、高用量セマグルチドでもみられます(ウゴービ7.2 mgのSTEP UP試験で21.6%、プラセボ0.3%)。
安静時心拍数のわずかな上昇
グルカゴン作用に関連して、試験では安静時心拍数のわずかな上昇(平均で数bpm程度)が観察され、多くは時間とともに軽減しました(NEJM 2023)。これもトリプルアゴニスト特有のシグナルとして注目されている点です。臨床試験では心拍数を含むバイタルがモニタリングされます。
04
副作用の持続期間と用量依存性
レタトルチドの副作用は、他の GLP-1系薬と同様に用量依存性で、増量期に集中する傾向があります(Eli Lilly — TRIUMPH-1)。消化器症状の多くは軽度〜中等度で、体が慣れるにつれて和らぐと報告されています。だからこそ試験では、いきなり高用量を使わず、低用量から段階的に上げる漸増デザインが採用されました(NEJM 2023)。
ただし、繰り返しになりますが、レタトルチドには公開用の公式な用量スケジュールは存在しません。本ページの数値はあくまで臨床試験で観察された結果の紹介であり、使用方法を示すものではありません。

05
「重大な副作用」はどう捉えるべきか(試験でのモニタリング)
レタトルチドは未承認のため、添付文書や枠組み警告(Boxed Warning)はまだ存在しません。したがって、承認薬のように確定した「重大な副作用リスト」を提示することはできません。ここでは、臨床試験で何がモニタリングされているかという観点で整理します。
消化器の重症例
承認済みの GLP-1系薬では急性膵炎・胆のう障害・胃内容排出遅延などが知られており、同じ経路に作用する薬として試験でも消化器の有害事象が注意深く追跡されます。
心拍数
上記のとおり、グルカゴン作用に関連する心拍数の変化がモニタリング対象です(NEJM 2023)。
甲状腺C細胞シグナル
GLP-1受容体作動薬というクラス全体で、げっ歯類での甲状腺C細胞腫瘍のシグナルが研究されてきました。レタトルチドは未承認のため枠組み警告はまだありませんが、クラスとして関連が研究されている領域です。
代謝・肝
第2a相 MASLD 試験(Nature Medicine, Sanyal ら 2024)では肝脂肪の大幅な減少が示され、代謝・肝機能も評価項目に含まれます。
最終的な安全性プロファイルは、第3相試験の完了と規制当局の審査を経て初めて確定します。それまでは暫定的な情報である点にご留意ください。
06
受診・相談の目安:試験参加者向けレッドフラグ表
(レタトルチドは臨床試験でのみ提供されます。試験に参加している場合は、以下の症状は速やかに試験担当医へ報告してください。)
| 症状・危険サイン | 考えられること | 対応 |
|---|---|---|
| 強く持続する腹痛(背中に放散することも)、± 嘔吐 | 膵炎の可能性 | 速やかに試験担当医・救急へ |
| 右上腹部痛・発熱・黄疸・灰白色便 | 胆のう障害の可能性 | 速やかに試験担当医へ連絡 |
| 嘔吐・下痢が続き水分が保てない/尿が少ない | 脱水の可能性 | 試験担当医へ連絡、重ければ受診 |
| 動悸・脈が速い・胸の違和感 | 心拍数上昇に関連する可能性 | 試験担当医へ報告 |
| ピリピリ・チクチクする皮膚感覚の変化 | 感覚異常(dysesthesia) | 試験担当医へ報告 |
| 発疹・顔や唇・喉の腫れ・呼吸困難 | 重いアレルギー反応 | 救急要請(119番) |
この表は目安であり、専門家の判断に代わるものではありません。迷ったら試験担当医または救急に連絡してください。
07
記録しておくと役立つこと
臨床試験では、日々の体調変化を正確に記録しておくと、担当医への報告や副作用パターンの把握に役立ちます。
- 症状の種類・強さ・出た日(吐き気・下痢・便秘・感覚異常・動悸など)
- 注射した日と、その前後で症状がどう変わったか
- 食事の内容と量(少量・低脂肪・こまめが消化器症状に優しいとされる)
- 水分摂取量(嘔吐・下痢があるときは特に)
- 気になったバイタル(脈拍など、可能な範囲で)
こうした記録は、「増量期に集中する」「用量依存で変化する」というレタトルチドの副作用の特徴を、自分の体で確認するのに役立ちます。
08
市場別の状況:日本を含め全世界で未承認
- 米国・その他: レタトルチドはFDA を含むどの規制当局からも未承認です。Lillyは承認の見通し時期を公表していません(Eli Lilly 公式、ClinicalTrials.gov)。
- 日本: 当然ながら未承認で、処方も購入もできません。使用可否や適応については、承認後に主治医・PMDA・最新の承認状況で確認してください。
試験外での入手(個人輸入・調剤品・オンライン販売など)は推奨・支持されません。 品質・用量の正確さ・安全性の監督が保証されないためです。

09
よくある質問
1. レタトルチドとは何ですか? Eli Lilly が開発中の週1回注射のトリプルアゴニストで、GIP・GLP-1・グルカゴンの3受容体に作用します。治験段階の薬で、FDA を含むどの規制当局からも未承認です。現在は臨床試験の被験者のみに提供され、処方も購入もできません。
2. レタトルチドの主な副作用は? 試験で最も多いのは消化器症状で、TRIUMPH-1の12mg群では吐き気42.4%、下痢32.0%、便秘26.1%、嘔吐25.3%(対プラセボ)でした。多くは軽度〜中等度で用量依存性を示し、用量を段階的に上げる増量期にピークを迎えました。
3. レタトルチドに特有の副作用はありますか? はい。この薬で比較的目立つ2つのシグナルがあります。感覚異常(皮膚のピリピリ)は12mg群で12.5%(プラセボ0.9%)、加えて安静時心拍数のわずかな上昇が観察されました。心拍数の上昇はトリプルアゴニストに比較的特徴的ですが、感覚異常は高用量セマグルチド(ウゴービ7.2 mg、STEP UP試験で21.6%、プラセボ0.3%)でもみられます。
4. 心拍数の上昇はどのくらいですか? NEJMの第2相では、グルカゴン作用に関連して安静時心拍数の平均数bpm程度のわずかな上昇が観察され、多くは時間とともに軽減しました。臨床試験ではバイタルとしてモニタリングされます。動悸や胸の違和感があれば試験担当医へ報告してください。
5. レタトルチドは他のGLP-1薬より副作用が多い? 消化器症状の頻度は用量依存で、高用量では相応に多く報告されます。加えて感覚異常や心拍数上昇というシグナルが報告されている点が異なります。ただし未承認のため、確定した比較評価は審査完了を待つ必要があります。
6. 膵炎や甲状腺のリスクはありますか? 未承認のため添付文書や枠組み警告はまだありません。ただし同じ経路のGLP-1系薬では膵炎・胆のう障害・甲状腺C細胞シグナルが知られ、クラスとして研究されています。試験でもこれらは注意深くモニタリングされます。最終的な安全性は審査で確定します。
7. 日本でレタトルチドは使えますか? いいえ。2026年7月時点で日本を含め全世界で未承認で、処方も購入もできません。合法的に使えるのは臨床試験の被験者のみです。試験外の個人輸入やオンライン販売での入手は推奨・支持されません。
8. いつ頃使えるようになりますか? Lillyは承認の見通し時期を公表しておらず、残りの第3相試験の結果と規制審査次第です。承認後の使用可否や適応は、主治医とPMDA・最新の承認状況で必ず確認してください。
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参考資料
- Triple–Hormone-Receptor Agonist Retatrutide for Obesity — A Phase 2 Trial doi.org
- Triple hormone receptor agonist retatrutide for metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease: a randomized phase 2a trial doi.org
- Lilly's triple agonist, retatrutide, delivered powerful weight loss in pivotal Phase 3 obesity trial (TRIUMPH-1 topline) prnewswire.com
- A Study of Retatrutide (LY3437943) in Participants Who Have Obesity or Overweight (TRIUMPH-1), NCT05929066 clinicaltrials.gov
- What to Know About Retatrutide lilly.com
- Changes in lean body mass with glucagon-like peptide-1-based therapies and mitigation strategies doi.org
- AJMC — Retatrutide achieves up to 30.3% average weight loss in phase 3 TRIUMPH-1 trial, May 21, 2026 ajmc.com
- EMA — Wegovy EPAR product information (SmPC 4.2 missed dose, 4.6 breast-feeding) ema.europa.eu












